「藤原さん、お願いがあるの」



また一段と溝ができてしまった使用人との仲。


けれど私は責めるつもりはない。

あのままだとしたら、結局は同じことになっていただろうから。


私がグズグズしていてお母さんとの縁を切ることができなかったのが仇になっただけ。


あの人はいずれ、私の大切なひとたちの大切なものをお金で消すつもりだったんだ。



「…海真くんの様子を、見てきて欲しいの。ちゃんとアパートにはいるのか、バーには行っているのか……元気そうなのか」



ひとりぼっちにさせてしまった。

私を孤独から救ってくれた彼を、私が孤独にさせてしまった。


私のように毎日ひとりで泣いているのかもしれない。


もう抱きしめることもできないから、せめて、せめて。



「私を……責めないんですか。私は乃々さんとの約束を破りました。私は…、裏切り者です」


「……少しでも本心でそう思っているなら、彼の様子を私に教えてほしい」


「………わかりました」