「っ…!」



すぐにカーテンを閉めて、パッと顔まで逸らす。

ぎゅっと噛みしめた唇が切れるほどの毎日が昨日から訪れた。


───ひとつの電話があったのは、数日前。



『戻ってきなさい、乃々』



戻らないと、もちろん伝えた。

私がちょうど買い物に出ていた時間にわざわざかけてきたのはお母さんだった。


藤原さんとはもう、完全なるグルなんだろう。


そういうところばかりは徹底していて、本当に嫌になる。



『わかってないのね。あたしに手を汚させないでと言っているのよ』


「……どういう、意味なの」


『あのバーはまだオープンしてから5年しか経っていないみたいね。店長である矢崎 秀太(やざき しゅうた)は離婚している妻と、4歳の娘がいるらしいのよ』


「っ!!……なに、を、」


『そして野村 玖未(のむら くみ)という女性は、どうにも実家は代々農業を営んでいるらしいの。せっかく繁盛しているというのに……残念ね』