「だったら本人に直接聞いてみようじゃないか。おーい、乃々。お友達が呼んでいるよ」



高級車の助手席が、そいつの手によって開けられる。

どこかに引っかけただけですぐ破れそうなワンピースを着て、髪にも首にもキラキラしたアクセサリー。


………似合わない格好してんね、ののちゃん。


おれと居たときなんか、いっしょに行った古着屋で買ったパーカーにショートパンツ姿。

たまに玖未さんからお下がりも貰ってた。


そっちのほうが似合ってたよ。



「私、庶民の生活はもう…恥ずかしくてしょうがないの」



一昨日まで俺の腕にいた女の子は、そんなことを言ってくる。

俺の腕のなかで涙を流して「ずっといっしょにいたい」と言っていた、かわいい女の子は。


とても、とても、寂しそうな目をしていた。



「美味しくもないご飯で、あったかくもない薄い布団で、やっすいシャンプーで。そんなのもう、我慢ならないわ」


「はははっ!そうだろうね。僕も心配で心配でたまらなかったよ。無理していたんだね、ずっと。ああ可哀想に」


「…そうなんです。だってこのひと、お金すらないくせに私のことが好きだとか結婚するとか、馬鹿みたいなことばっかり……言ってくるのよ」