高級ホテルの最上階、プライベート用に用意されたバーは見たことがある程度で、17歳の自分にはもう少し先の話だった。


ピアノバーやジャズバーというものは聞いたことがあるけれど、演奏を聞くなら海外の有名な演奏会へと行く。



「おれ、ここで奴隷してんの」


「バイトな。せめて社畜と言え」


「あんま変わんないじゃん。あれね、あんなのが店長って世も末だと思うだろうけど、見た目によらず頼れるひとなんだ」


「減給決まったな、ミト」


「いや褒めてんだって。ねえ?」



なんでもいいと答えて、オレンジ色の飲み物が出てきた。

私を座らせた端のテーブル席にそっとグラスを置くと、店長さんとテンポいい漫才のような会話をしながら彼は得意げに笑う。



「そういや、まだ名前聞いてなかったっけ」


「………のの」


「のの?の×2でいーの?」


「…うん」


「ののちゃん」