海真side




「ののちゃん、学校やめれる?」


「……え…?」


「もしおれが今すぐ辞めてって言ったら、やめられる?」



迷っているな、と思った。

もちろんそれはおれも分かっていたし、だとしてもおれを選んで欲しいという願いも懸けていた。


あれからののちゃんの母親がバーに現れることも、おれたちの前に現れることもなかったとしても。


確実に娘を引き戻しにくるだろうとは、どう考えたって。



「逃げよ、もう」


「…逃げるって、」


「ごめん。新しい家、もうちょっと先になりそうかも」


「……審査…、通らなかったの…?」


「…そういうわけじゃない。けど、おれがやっぱり保留でって言っといた」



罪悪感なんか、ないよおれ。
だってこれは正しいと思う嘘だ。

ののちゃんを悲しい顔にさせるくらいなら嘘でいい。


こういうプライドだけは持ちたくないと思っていたおれだったけど、愛する女の子ができるとこうなるんだって、初めて分かった。