「…なんのことかサッパリね」


「あんな簡単な英語すら読めませんでした?CLOSEDって看板下げてあったでしょ、お店はもう営業してないのよ。
なのに勝手に入ってくるなんて、不法侵入で訴えられても文句言えませんよ」



するとお母さんはさぞかし面白かったのか、場違いなほど笑い出す。



「あーおかしい!ねえ藤原、あたしの娘に拉致まがいなことをしておいてあたしたちが犯罪者ですって!庶民の考えることって、どうしてこんなに低レベルでバカなのかしら」



なにがそんなに面白いの。

さっきからずっと変なことばかりを言って浮いているのは、あなたひとりだ。



「何度も言ってるじゃない。あたしは娘を迎えに来ただけよ」


「…乃々ちゃんはあんたの所有物なんかじゃないっつーの」


「これはあたしたち親子の問題なの。部外者は口を挟まないで」


「……親子とかさあ…、どいつもこいつもだいったいできてない奴に限ってそーいうこと言ってくんのよ…。あんたが……あんたが母親として娘を守ってやらないからっ、乃々ちゃんは屋上から───、ッ、」


「やめとけ」