「こんな場所にいるような人間たちと関われば、さぞかし悪影響になることだわ」


「ずっと笑ってましたけどね」


「……………」


「あなたの娘さん、おれが知るかぎりこの店で泣いたことは今日が初めてなんですよ」



お客さんにも顔を覚えてもらえるようになった。

乃々ちゃんって、常連さんからも呼ばれる。


店長さんはこの前、私のことを「うちの大切な看板娘だ」なんて紹介してくれたの。


17年間を過ごしてきた場所より、ここにいるみんなのほうがずっとずっと本当の家族みたいだった。



「これだけは教えておいてあげる。相手にしていい人間としちゃいけない人間は、しっかり見定めたほうがいいわ」


「…はっはー、確かに。このひとだけは相手にしちゃダメだわ海真。こんな犯罪者なんか」



「ごめんね乃々ちゃん」と言いながら、ずっと黙っていた玖未さんがとうとう立ち上がった。

一応は私の母親である人間を犯罪者扱いしたことに謝ってきたんだろう。