「いい加減あたまを冷やして!!乃々の行動のひとつひとつがお母さんの仕事と人生まで狂わせているのがどうして分からないの…!?」



ここで名前を呼んで、自分は母親だと示してくる。

海真くん、見てる?
これが私の生きていた場所だよ。


これがあの日、屋上から飛び降りようとした理由なの。



「だったら、そんな不良娘はおれが貰っていいですか」



ぐいっと引かれて、背中に隠された。



「そうすれば家柄にもお母さんのお仕事にも迷惑かけることはなくなると思います。あなたもあなたの人生だけを、今まで以上に歩けますよ」


「馬鹿なことを言わないで。……もしかしてあなたが乃々をたぶらかしているって噂の?」


「たぶらかしてるつもりはないんですけど」


「あらそう。だったら話が早いわ。金輪際、うちの子に近づくのはやめて」



海真くんのことなど虫けらを扱うように、まったく相手にしていないお母さん。

店内をぐるりと見渡してから、ふっと鼻で笑う。