「周りを振り回してるのはお母さんだよ。帰らない…、私はぜったい、あんなところには帰りたくない…っ」


「調子に乗るのも大概にしなさいよ。財前家がうちにとって、昔からお世話になっている大切な取引先だということは知ってるでしょ。いい?これはあなただけの問題じゃなく、あたしの問題でもあるの」


「……お母さんにとっての子供は…、仕事なんだね」



それすらお母さんにとっては”くだらないこと”なんでしょう。

だったらお母さんが財前さんと結婚すればいい。


娘には勝手な縁談を組んでおいて、自分は好きに男と関係を持っていることを私が知らないとでも思っているの?



「あたしのなにが不満だっていうの?あなたの欲しいものは昔から与えてあげているじゃない」


「そんなに言うなら…、一言でも娘を心配する言葉くらい言ったらいいのに……!今でさえ私の名前すら呼んでくれないんだからっ、そんなのが母親だなんて言え───、ッ!」



パシン───ッ!!

叩かれた頬が、叩かれただけではない心の痛みまでをも一緒に連れてきた。


私はいつも、いつも、大嫌いな人間に叩かれる。