ただあんなふうに言われるたびに私の人生が軽視されているみたいで、物のように扱われているみたいで、悲しくなる。



「やっぱ角部屋だと家賃も高くなる…か。できるなら敷金礼金ナシがいいし、あと駅から徒歩10分以内」


「あまり遠くにしすぎるなよ。なにかあった場合はここに駆けつけられる距離にしたほうがいい」


「うーん…、わかってるけど。このへんのマンションは候補に入れてない。騒音だらけでうるさいし」



そして数日前から海真くんは、物件探しに頭を悩ませていた。

今日もカウンター席に座って、不動産屋から貰ってきたらしい資料やスマートフォンで物件サイトを見比べてはにらめっこ。


店長さんもチラッと覗いてはアドバイスを入れて、玖未さんはそれを眺めながらカクテルを呑んでいる。


引っ越そう───と、彼が私に告げてきたのも数日前だった。