「どこが好きってのは、もう好きになったらぜんぶ好きなんだよ。顔も身体も性格も仕草も、ぜんぶ」


「……うん」



私が悩んでいたことは小さなことだったのかもしれない。

いまの海真くんは私のことが好きなのだから、それでいいじゃないか。



「賞味期限切れたおにぎりを美味しいって言ってくれる女の子なんか、たぶんののちゃんくらいだし」



だって美味しかったから。
ちなみにあのあと、お腹も下さなかった。

冷蔵庫に入れておけば1日くらい大丈夫、を学んだ日だ。



「ちなみにおれがバーで見てきた客はさ、女の子にそういうの聞かれてつい“昔いっしょに住んでた女に似てた”とか口がすべる馬鹿な男───って、あれ?なんで?なんでまた拗ねちゃった?」


「海真くんが余計なこと言ったからだよ…!ばかっ」


「…ごめん。ちゅーしたい」


「なっ、やぁ…っ、んん…ッ!」


「……怒っても可愛いだけじゃん」



この1回のキスだけは許してしまったけれど、それからはやっぱり避けつづけた。


────そして、今現在である。