よく覚えている。

思い出すと今もドキドキするくらい、私に
とって与えられた初めての甘さだった。


ステージ裏で私の首筋に唇を落としてきたの、海真くんは。



「海真くんもそのときには私のこと…、好きだったの?」


「…好きっていうか、惹かれてはいたよ。可愛いなとも思ってた。また顔見たいなとか会いたいなとか、ね。
そんでののちゃんから泣きながら電話かかってきたとき。あれだな決定打は」



本当はあの日、彼はいつもお世話になっているお客さんのリクエストに応える手前だったという。

けれどそれを後回しにしてまで飛び出して、泣いていた私を拐いに来てくれたんだ。



「じゃ、じゃあ…惹かれたきっかけは…?」


「1コ1コ話してもいいんだけど、そんなのしたらキリないじゃん。それすると反対に惹かれない部分は嫌いなのかって思っちゃうわけだ」



そうかもしれないと、視線が落ちる。

そんな私に微笑んだ海真くんは、私しか知らない声で言ってきた。