「ぼっ、僕を警察にでも突き出すつもりか…!?残念だが僕は警察なんかまったく怖くないぞッッ!!僕の婚約者を奪ったおまえを逆に突き出したいくらいだ……!!」



しない。

あなたにそんな勇気はない。


なにも持っていない身ひとつで私を地獄から救い上げてくれるような、そんな強さなどない人なのだから。



「おれは見てのとおり、金なんか持ってない。ろくに家族もいない。あるのは少し丈夫なカラダと、普通より器用な手先くらいだ」


「ぼぼぼっ、僕のほうがっ!!僕のほうがおまえなんかよりずっとずっと前からの知り合いなんだ……っ、おまえより乃々のことを知っているんだァァ…!!」



そして海真くんはこぶしを握りしめた。

ギャンギャン騒ぐ財前さんへと向けて、ブンッッと音が鳴るほど殺意を込めて勢いよく。



「ぎゃああ……ッッ!!」



───けれど、ピタリと寸前で止まった。



「…ああ、もう1コあった。どんなののちゃんも愛するっていう───おまえなんか相手にもならない自信だよ」