あとは苗字。

姉ちゃんは親戚のほうに変わったけど、おれの“水渡”という姓は本当のものだ。


それほどおれは引き取られた親戚に嫌われていたってことでもあるけど、そこは水渡で良かったと思ってる。



「………のの……、」



ののちゃん、のの、乃々。

初めて作ってくれた肉じゃが、あれどれだけ嬉しかったと思う?


うまい、なんてもんじゃないよ。


おれね、あの瞬間、きみにおれの家族になって欲しいって思った。



「───退けよ。蹴り飛ばされたくなかったら、今すぐ退け」


「えっ、キャア…ッ!!」



おれに股がっていた女を突き飛ばして、脱がされかけていた服も元に戻す。

即効性の睡眠薬を飲ませたのにどうしてそんなにも回復が早いのかと、驚きに声が出ないようだった。



「丈夫でしょ、おれのカラダ。家族みんな先に逝っちゃったぶん、神様がせめておれだけはって与えてくれたんだろーね」



ごめんののちゃん。
おれ喧嘩、好きだったよ。

ひとをたくさん殴ったし、逆に死にかけたことだってある。