「どうしよう。この子、私のそばに置いておきたくなっちゃったかも」



鼻歌をうたいながら、シュルシュルと着ているドレスのリボンを外しているような音がする。

どうやらおれは、とある部屋にまで運ばれてベッドに寝かせられているらしい。



「………、……はー…」



起きてるぞ、とだけでも伝えたくて、今できる精いっぱいの息を吐いた。

気づいた女は目を向けて、ニヤリと笑う。



「ごめんなさいね。でも、あなたも悪いわ。自分の身分を弁えずこの世界に来てしまうんだもの」



スーツを着たところで、髪を整えたところで、形ばかりを揃えたところで。

所詮庶民は庶民なのだと。



「お嬢様と庶民が結ばれる、だなんて。そんなものが許されるのはつまらないおとぎ話だけ」



下着姿になった女は、おれに股がるようにしながら見下ろしてくる。

おれの手を拾って、その手を誘導させながら自分の胸の膨らみにまで。


アンッ、と、聞きたくもない不快すぎる嬌声が勝手に響いた。