そして異様なほどに勧められるお茶。

これは少し前に出されたもので、「お熱いので冷めるまでお待ちください」と、使用人の岡林さんに静かに言われていた。



「ののちゃん待って」



そろそろ冷めたかと、湯飲みを口元に近づけようとした私の動きを止めたのは海真くんだった。



「どうかしたの…?」


「日本茶ってさ、冷めると美味しくないって言わない?」


「え、そう…だね」


「変えてもらったら?」


「いやいやっ、冷めても美味しいのが高級茶というものだよ!」



そこで焦ったように入ってきた財前さん。

じっと鋭く見つめる海真くんの眼差しに、どこか緊張を感じているようだった。



「すみませんね。庶民ってのはこんな失礼なことを言うんですよ」


「そ、そりゃあいつもは安い茶を飲んでいるだろうからな…!それにちょうど同じお茶を切らしていてね、君たちに配ったのが最後だよ」



何かが入っている。

嘘をついている顔をしているんだ、隣の婚約者はずっと。

汗っかきな上に、また汗が垂れている。