………なんだろう、この時間。

私たちは誰を紹介されて、ここに何をしに来たんだろう。



「本当は地下にあるプライベート用の美術展に案内したいんだが、どうせお友達に案内したところで退屈にさせてしまうだろうからな」



そんなことない。

彼はピアノが得意で、ひとの心を動かす力を持っているの。



「確かに芸術センスはないですけど、おれローマの彫刻に似てるって言われたことありますよ」


「……………」



アンティノウスのことだ……。

ね、ののちゃん?と、私だけを見てくる。



「はははっ、そんな神聖な存在を君なんかと一緒にされたらファンが怒るぞ」


「たしかに。おれもびっくりでしたもん」


「…彫刻は揃えていないが数千万もする絵画がいくつも飾ってあってね。盗まれたら大変だ、今日はやめておこう」



失礼なことを言わないで。


たとえもし盗まれたとしても。

絵画だってあなたのような人に持っていられるくらいなら、海真くんのほうが幸せになれるよ。


それは私がいちばん知っている。