カシャカシャと、まるで自分の弟の記念撮影をするようにスマホカメラを向けている玖未さん。

店長さんもどこか満足そうにしながらカウンター内の定位置へと戻ってゆく。


事情をなんとなく話したとき、さっそく海真くんに「着ていく服はあるのか」と問いかけたのは店長さんだった。


もちろん海真くんは私服で向かうつもりだったらしいが、店長さんの手によってまた一段と大人っぽくなってしまった。



「ののちゃん」



複雑な気持ちで見惚れてしまっていた私の前、海真くんはしゃがんで見上げてくる。



「…やっぱり…、やめよう」


「おれがこんなことしたところで真似っこにしかならないから?」


「ちがう…、そうじゃないの」



そうじゃないけど、不安なの。
不安で不安で、怖くて仕方がない。


なにかを企んでいることだけは分かる。

あの人はそういう人だ。