「…あいつが婚約者?」


「…うん」


「さすがに23歳は嘘じゃん。38歳に見えたけど」


「……老けてるの、すごく」



ふっと笑っているけれど、笑っているようには聞こえなかった。


実際に目の当たりにして私の立場を実感してしまったのかもしれない。

婚約者だなんて、一般的な目線で見るとドラマのような話だと思うから。


でも、本当なの。



「ん…ッ!…かい……っ、ンンッ」



離さない。
ぜったいあんな男には渡さない───、

強い強い覚悟と独占欲を感じるキスで、苦しいくらいに唇が塞がれた。


離さないで。

ぜったい、なにがあっても。



「…このまま逃げる?」


「……もう…、逃げてるよ…?」


「たとえば苗字を“水渡”にしてさ。…遠坂 乃々さんは存在しないってことにする」



したい。
できるなら、今すぐにでも。

ただそこには親の承諾だっているだろう。

まだ17歳で高校生な私たちは。