「───なんで死のうとしてたの?」



こんなにも直接的に聞かれるとは思わず、咄嗟に身体を押し退けてまで離れようとしたのだけれど。

逆にぐっと引き寄せられては、そんなものは無意味に終わった。



「かなりすごいことだよ、自分で自分の命を終わらせるって。…すげえ、怖いことじゃん」


「………あれは…、気の、迷いで」


「気の迷い?ただの気の迷いで、あんな高いとこから飛び降りようって?」



ひどいね、言い訳。

言えば言うだけイメージが下がってしまいそうで、泣きたい。


そもそも最初から幻滅されているのかもしれない。


あの場所を事故現場にしようとした身勝手な私は、そのビルで働く海真くんにとって何よりも迷惑なお客さんだったのかも。



「……ごく世間のひとには、わからないことも…あるんだよ」


「はは、…そーかも」


「っ…、私が海真くんのこと、ちゃんと分かってあげられないように」


「…たしかに。庶民のおれなんかにはオジョーサマなののちゃんのこと、わかんないんだろーね」