ずっと逃げたかった。

1度でもいいからこんな生活から抜け出して、1度でもいいから自由に走ってみたかった。


平然なふりをして、いつも心では泣いていた。


私の心を見つけてくれる人なんか、この先もいないと思ってたんだ。



『待て待て、オジョーサン。スカイダイビングするには暗すぎるし、命綱がないってのはプロよりプロじゃん』


『数分はある。だったらせめてその数分だけでも素敵な思い出にしない?』


『ねえ。そんなとこで話すんだったら、もっとこっち来て話そーよ』



そんな私の前に現れた、ひとりの男の子。

ぜんぶを終わりにしたかった私の命を見つけてしまった、正反対な男の子。


ぜったいに私の手を離さないと言ってくれた。




『まずはゆっくりカラダこっちに向けて。落ち着いておれを見て。───…そう、できた』




これが私の人生で。

すべてを捨ててもいいから、一緒にいたいと思った運命との出会い。


けれど彼は────今日も目を、醒まさない。