彼らは楽しそうに笑いながら小石を犬にぶつけようとしている。吐き気が出そうなくらい嫌な光景だった。

黒い学ランを着ていてここら辺では有名な不良校、黒門中学の生徒たち。

商店街を抜けた向こう側にある黒門中学はうちとは何かとよくもめごとを起こしていた。

だから、女子生徒なんかは彼らの視界に入らないように気を付けていたくらいなんだ。

黒門中学の生徒は素行が悪くて有名らしい。

なんてひどいことするんだろう、こんなの許せないよ。

「フー」猫のうめき声を発してしまうほど怒りに震えた。

私はグッと拳を握り今にも走りだそうとした……その時。

ついさっきまで隣にいたはずの一条くんが彼らの背後まで近づいていた。

え?一条くん?

きっと彼は我慢できなくて私よりも先に飛び出していたんだ。

「やめろ」

一条くんは今まさに大きな石を投げようとしていた男子2人の腕を掴みながら怒鳴った。
 
「おわっ、んだよてめー」

一条くんに強く押さえつけられた黒門の男子達はぽとりと石を落とす。