「だめか?」

……あ。

拗ねたように眉を寄せる彼をみたら、断れる自信がなかった

「え、えっと」

そんなに寂しそうな顔しないでってついつい思っちゃう。

私、一条くんにはほんとに弱いんだ。

「いいよ」

小さく頷いたら、教室中がドッと沸き立った。

「うそだろ、あの一条が女子を誘うなんて」

「猫宮さんすげー」

「やだ、なんで猫宮さんなの?ズルい」

「なんなのよあの態度は。可愛いこぶっちゃって」

いつもクラスの隅っこで目立たないように過ごしていたのに一気に注目の的になってしまいいたたまれない気持ちになる。

どうしよう、今すぐこの場から消えちゃいたい。

すると一条くんが不機嫌そうに口を開いた。

「おまえらうっせーよ、黙れ」

大声ってわけじゃないけど、よく通る鋭い声に威圧されて教室中が水を打ったように静まり返った。

さすがにこのクラスに一条くんをからかったりできる人はいない。

「行くぞ」