猫の私を助けてくれてありがとうって、正直に言えたらどんなにいいだろう。

「あ、じゃあ私はこれで、もう行くね」

私も照れくさくなって、そそくさとドアに向かって歩き出した。

「じゃあな」

あっさりとそう言った彼はすぐに私に背をむけてベッドの掛布団をめくる。

そして、隅々まで見て何かを探し始めた。

断ち切るようにギュッと目を閉じた私。

もう、おしまいにしなきゃいけない。

彼に関わることはいけないこと。

これ以上踏み込むと、私の家族にまで危険が及ぶかもしれないんだから。

だから、諦めなきゃ……だけど。

ドアに手をかけた時、消え入りそうな彼の独り言がきこえてしまった。

「バニラ、どこに行ったんだよ」

辛く寂しそうなその声に胸をえぐられた。

気がつけば振り返って彼の元へ走っていた。

「あ、あの」

「まだいたんだ?」

ベッドの隙間を覗きこんでいた彼はバツが悪そうに振り返る。