初めて喋った時は彼のことをめちゃくちゃ怖い人って思ってたよ。

だけど、今は違う。

あの優しい笑顔を知っているから。

「大丈夫だよ。一条くんは全然怖く無いよ」

知らず知らず私の口元はほころんでいた。

「優しい人だってちゃんとわかってるから」

「……っ」

私がそう言うと、彼は大きく瞳を見開いてびっくりしているみたいだった。

「そうか……」

ポツリと呟く彼はちょっと照れ臭そう。

「あ、あの、いろいろとありがとう」

「え、何が?」

私が唐突にお礼を言うと、彼はキョトンと目を丸くする。

「昨日、保健室に私を運んでくれたでしょ?まだお礼が言えてなかったから」

「ああ、そのことか」

「うん、ほんとにほんとにありがとう」

「は?大袈裟だな」

彼はかすかに笑ったように見えた。

大袈裟なんかじゃないよ。ほんとはそれ以外のこともいっぱいありがとうって伝えたいの。