このまま、きっと昨日のことなんてすぐに忘れてしまうよね。

猫のバニラのことはいつしか彼の記憶から綺麗に消え去るんだろうな。

きっと、これでいいんだ。

そう思った私は保健室に向かうために席を立った。

一階にある保健室に着くと、そこには誰もいなくて、小さく開いた窓の外からは金木犀の香りが漂ってくる。

よし、もう一度徹底的に探すぞ、って自分自身に気合いをいれた。

パッと見た感じやっぱり見当たらない。

こうなったら、猫の嗅覚を使って探し出そう。

ベッドのシーツの間や床に鼻を近づけてクンクン臭ってみた。

いろんな匂いが混ざり合っていてはっきりわからない。

だけど、目を閉じて集中する。

たくさんんの知らない人の匂いの中に大好きな花音ちゃんのおひさまみたいなぬくもりを微かに感じる。

匂いをたどって床に四つん這いになっていたら……。

「……え?」

「……っ」

目の前には長い足がありびっくりして、恐る恐る顔を上げた。

「きゃっ」