「千颯、お父さんが怒ってたよ。そろそろ自分の家の方に帰りなさいよ」

おばあちゃんは、孫を心配そうに見上げる。

「まだ帰らないよ。親父はオレの話なんて全然聞こうとしないからさ」

トゲトゲしく言って、眉間に皺をよせる彼。

「そんなこと言っても、家出なんていつまで続けるつもり?」

「家出つっても隣りだろ。俺は当分ここにいるよ。親父のやつ将来は絶対医者になれなんて横暴なんだよ。俺にだって夢くらいあるんだから」

「まあ、それじゃあストライキだね」

おばあちゃんはおおらかに笑う。

「うん、そうだよ。だからばあちゃんも協力して」

「そうねえ、私は千颯がいてくれたら楽しいけど……あら?」

会話の途中でポケットから顔だけ覗かせていた私とおばあちゃんの目があった。

「まあ可愛らしい猫さんだこと」

「ニャア」

「こんにちは、猫さん」