「あそこにいる、ネコ……」

彼が急に私の方に顔を向けたからびっくりした。

わわっ、やっぱり凄く綺麗な顔。

ってそんなこと言ってる場合じゃない。

「猫田だっけ?」

無表情で尋ねてきたから、ずっこけそうになりながらも訂正した。

名前すら覚えてもらえないのか。

「猫宮ですっ」

「そうだ猫宮。これさ」

「ちょっと猫宮さんっ」

彼が何かを言おうとしたのを遮るように声を上げる佐伯さん。

彼女が私のもとへ詰め寄ってきたから、ビクッとした。

「ちょっと、猫宮さん話があるんだけど、顔かしてくれるかな」

胸の前で腕を組んで冷ややかに見下ろされた。

もしかしたら、私が彼に絆創膏を渡したことが気に入らないんだろうか。

「は、はいっ」

私は小さく震えながら彼女の後をついていく。

その際に横目でチラッと一条くんを見たら、涼しい顔をして知らん顔。

うぅー、一条くんのせいで私が佐伯さんに怒られるかもしれないのに……。