気持ちがまだ落ち着かなくてフワフワとしてる。

彼に手を引かれて、2人である場所へ向かって歩いていた。

彼は時々、心配そうに振り返る。

その度に、大丈夫だよって言ってふにゃっと笑った。

母と兄は、後始末にいくからと言って廃屋で別れた。

おそらく2人は黒門中学の不良達のもとへ向かって行ったんだ。不都合な記憶だけを消すために。

私が取り憑いた番長は私が抜け出した直後、脱兎の如く逃げていったらしいからよほど怖がっていたみたい。

記憶を消したからと言って絶対に安全とは限らないから、私たちは本来ならこの地を去らなくてはいけなかった。

でも、今回は違う。

このまま、この街に少なくとも1年間はとどまる猶予をもらえた。

その間に、私が自分のあやかしの力を使いこなせるように頑張ればいいんだ。

「1年間なんてあっというまかもしれないよな。そうだ、早く俺のことを知ってもらいたい」

一条くんは理解も切り替えも早くて、すぐに次のステップを上がろうとした。