だったらどうして?

もう一度恐る恐る、彼のほうを見ると……やっぱりまだ見てる。

目が合うと彼は大きな瞳を細めて口角を上げる。

ふわわっ……やっぱり凄くカッコいい。

私も笑顔で返したかったけど、上手に笑えなくて口元がヒクヒク。

ああ、きっと変な奴って思われてるんだろうな。

目と目が合うだけで背中がこそばゆくて足元もそわそわしちゃうよ。

少ししてから、彼に気づかれないように盗み見ていたら目が離せなくて困った。

彫刻のように整った綺麗な横顔、大きくて筋張った手、座っていてもわかる長身。

やっぱり他の誰よりも輝いていて特別に見える。

無意識にほうってため息が漏れる。

「すずちゃん、私は応援してるからね」

花音ちゃんはグッと胸の高さで拳を握る。

「う、うん」

どうやら花音ちゃんの中では私の一条くんへの気持ちが確定しているみたい。

彼女に対して感じる大好きともまた違うこの感情はいったい何なんだろうな。

こんな気持ち、生まれて初めて。

もしもこれが恋だって言うなら、正真正銘の私の初恋。

もう一回彼のほうをこっそり見て、ぼんやりとそんなことを考えていた。