フイッと体を横に向けた彼女は、グスッと鼻をすする。

「それなのに、すずちゃんは」

顔は見えないけど、花音ちゃんの涙の水滴の匂いを感じて私も泣きそうになった。

私のために泣いてくれる人間なんて今まで誰一人いなかった。

これから先、どこにいこうとそんな人が簡単に見つかるわけないよ。

「ほ、ほんとに?いいの?」

私、こんなに幸せでいいのかな。

胸が締め付けられるくらい嬉しいなんて気持ちは初めてだ。

自然と溢れ出す涙が温かかった。

「いいも悪いも、友達になったのは一条くんより私の方が先だよ」

「う、うん」

「私だって秘密とか、どうでもいいし」

「うん」

「言いたくないことまで無理やり話せなんて私だって言わないよ」

「ありがとう、花音ちゃん」

私は勇気を出して一歩踏み出していた。

人との間にある溝を初めて自分からまたいだ瞬間、思いのたけを込めてこう告げた。

「花音ちゃん私と友達になってください」

そして、肩を震わせる花音ちゃんを横からぎゅっと抱きしめたんだ。

「うんいいよ」

やっぱり花音ちゃんの優しいお日様の匂いが大好き。

「花音ちゃん、泣かないで」

「すずちゃんこそ鼻が赤い」

「え、うそ、恥ずかしい」

それから2人でキャッキャ言いながらじゃれ合っている間に一条くんはそっと中庭から姿を消していたみたい。

きっと、気を利かせてくれたんだろうな。

一条くんにも感謝しないと。

だって私、彼のおかげで花音ちゃんと仲直りができたんだもん。