一条くんと花音ちゃんに代わる代わる目を向ける。

2人ともどうしたものかと困ってるみたい。

そして、佐伯さんに向き直ってこう告げた。

「私、校外学習の日は家の用事があってお休みするから」

「え?」

佐伯さんの瞳に困惑の色が見えた。

考えてみれば、私はこれまで遠足や修学旅行は全部欠席してたんだ。

だから、今回も行かなければいい。それで全部解決するの。

「だから気にしないで。私は数に入れないでくれていいから」

「……」

こうして私はまた彼らとの間に線を引いた。

いつだって、これが私の正解だから。

どうあがいても人間と猫の間にある溝にはさまったまま、私は動けないんだ。

「そ、それじゃ私、教室から出とくね」

「ちょっと待ってよ。私そんなつもりじゃ……」

佐伯さんの焦ったように引き止める声。

「すずちゃん、待ちなよ。そんなのダメだよ」

いつもは穏やかな花音ちゃんにしては珍しく責めるような声。

「猫宮、行くなよ」

そして一条くんの心配そうな声。

「……」

その全部を振り切って教室を飛び出した.。

廊下に出ると、さっきまでの重苦しかった空気から解放されてホッと息をつけた。

これで、よかったんだ。

だって、私は猫で人と深く分かり合うことなんてどうせできないんだから。

せめて手を差し伸べてくれる優しい人達に迷惑をかけなくてすむならそれでいい。