彼は無言で学校の正門の方にスタスタ歩きだしたから、慌てて後を追いかけた。

「あ、あのっ」

「なんだよ?」

チラッと横目で私を見てうんざりしたように息を吐く彼。

しつこい奴だなって思われてそうだけど仕方ない。

「こ、これ、使ってください」

鞄から取り出した絆創膏を彼に差し出した。

「……」

彼はそれを受け取らず黙って歩き出したけど諦めずに素早く彼の前に回り込んだ。

「手、怪我してるから……使ってください」

「……」

「お、お願い」

さっきから彼の手の甲には血が滲んでいて痛そうだから気になって仕方がなかったんだ。

猫は鼻がいいので、血の匂いに敏感。

朝っぱらから誰かと喧嘩でもしたんだろうか。

さっき辛そうに座っていたみたいだし、心配になってしまう。

眉間に皺を寄せて渋々受け取ってくれようとして右手をあげる彼。