ピピピピ…ピピピピ…
いつもどうりの朝が来た…はずだった。
昨日、兄たちが引越してきて、一日中大変だったんだよね…しかも寝不足。
おかしい、おかしいんだ。昨日兄たちが引越してきたのは、朝の10時頃。片付けを手伝ってるうちに夜の6時。ご飯を食べてストレッチしてベットに入ったのは、9時だった。すぐ寝れるはずだったのだ。
なのに…隣の部屋から、音楽、足音、話し声!お母さんは、いつも早めに寝ていたから静かだったけれど、兄たちが来て変わってしまった…
結局、寝れたのは、12時。5時間しか寝れなかった私は、いつも4時半に起きていたのが、5時に起きることになってしまった。
いつもは、1時間ランニングするけど、30分にするか…
私は、着替えながらそう考える。
ランニングしやすい服に着替えて、イヤホン、スマホを持って部屋を出る。


すると、目の前にいた誰かとぶつかった!
顔をぶつけて、思わず、顔をしかめる。
部屋の前にいたのは、三男、三夜だった。
「凜々…ごめん。痛くなかったか?」
心配そうに顔をのぞきこんでくる三夜に、怒りが収まってくる。
「大丈夫!それより、三夜朝苦手じゃなかった?」
すると、三夜は、バツの悪そうな顔で、こう答えた。
「じゃんけんで負けて、日当たりの良すぎる部屋になったら、朝日で目が覚めた。」
ぶすっとした顔でほかの兄弟が寝てる部屋を恨めしそうに見た三夜に、思わず笑ってしまう。
「ふふっ!…なんで、みんな日当たりの良すぎる部屋嫌いなの?」
三夜は、笑われたことに、さらにぶすっとしながら言った。
「一月と四音は、朝弱いから。もうひとついい感じの日当たりの部屋は、二葉が取ってたけど、あいつは、多分影を好む植物とか、本を日焼けさせたくないからとかだと思う。」
二葉、植物育ててたんだ。
「凜々は、なんでこんな朝早くに?」
「私は、ランニング。モデルは、運動も大切だからね!」
そう、私は自分磨きを小学校から頑張ってきていた。モデルなら小さくても稼げるから。そうすれば、お母さんを楽に出来ると思ったから。
その努力も実って、中学の頃からARISAというファッション誌で4年間、モデルをしている。
しかもこの間、新しいドラマの主役のオファーも来ていて努力をさらにしているところだ。
「頑張れよ。」
三夜は、私の話を聞いて、ふっと軽く笑ったあと私の頭を撫でて部屋に戻って行った。
三夜って軽い感じするけど笑うとかっこいいんだよね。
おっと危ない!ただでさえ時間が無いのに!
私は、お気に入りの初恋を歌った曲を流しながら、外へ出て、走り始めた。

帰ってくると、お母さんが、起きて朝食を作っていた。
「ただいまお母さん!」
「おかえり凜々」
私は、制服に着替えようと階段をあがった。
その途中で、ふと思い出した。
「ねぇお母さん。一月たちのお弁当作るの?」
私の学校ではお昼は購買か、お弁当のどちらかだ。私は、いつもお弁当を作ってもらってるけど、一月たちは、どうするんだろう。
「一月たちもね、お弁当がいいんだって。12年ぶりのお弁当だからね、お母さん張り切っちゃうよ!」
お母さんは、ニコニコ笑いながら返してくれた。
「 楽しみにしてる!」
私は、そういい自分の部屋に戻る。
うちの学校の制服は、セーラー服だ。青を基調とした服で、中高一貫のため、小学生も結構受験してくる。
私は、制服に袖を通し、お気に入りのドレッサーに座って髪を巻く。
お母さんとお父さん譲りの、色素の薄いミルクティーのようにも見える子の髪が、私は、とても自慢だ。
いつもどうり、ふんわりとしたゆる巻にして、お気に入りの貝殻のヘアピンをつける。ベビーピンクのリップを塗ったら、完成だ。
いつもの私が、鏡に映る。ニコッと笑ったら昨日のうちに準備したカバンを持ってリビングに行く。
私がリビングに行くと、まだ制服に着替えた二葉と三夜以外は、来ていなかった。
「おはよ、二葉!」
「おはよう凜々」
私は、昨日から5つ椅子が増えたテーブルに座る。
改めて見ても、5つ増えるとこんなキツキツなんだ…
そんなことを考えているうちにお父さんと四音が降りてきた。
「おはようお父さん、四音!」
「おはよう3人とも」
「おはよぉ」
四音も制服に着替えていて、顔の横には、ヘアピンをバツの形につけていた。その形は、小さい頃からしていて、四音のチャームポイントのようなものになっていた。
「凜々〜一緒にさぼろ〜!」
「ええっ!」
四音は、私に抱きついてきたかと思ったら、眠そうにそう言ってくる。
「四音?サボらないって昨日約束したわよね?」
お母さんが、台所から声をかけた。
「凜々〜お母さんが怖い〜!」
四音は、昔から甘え上手だなぁ…裏の性格もやばいけど…
そんなことを考えていると上からドタバタと足音が聞こえてきた。
「ごめん!寝坊した!」
降りてきたのは、一月。相変わらず寝坊したようだ。
寝癖が跳ねている髪が可愛らしい。
「遅いぞ一月。早く座ってご飯食べるぞ。四音も早く。」
二葉が一月を叱り、一月は、急いで席に座った。
お母さんも席に座り、
「「「「「いただきます!」」」」」
「「いただきます。」」
私たちは、仲良く声を揃えると、朝ごはんを食べ始めた。
今日のご飯は、ホットケーキ。ふわふわのパンケーキに思わず唾を飲む。
「ははっ!」
横から笑い声が聞こえ、思わず横を見ると、それは、二葉だった。
「な、なんで笑うのよ二葉!」
私が頬を膨らませ怒ると、よけいにおかしかったようでさらに笑いながら言った。
「やぁ、凜々がホットケーキ好きでよく目を輝やかせていたの思い出しちゃって」
「あ〜!わかる!ボクも懐かしいって思ったもん!」
全くみんないつまで…
「みんなしていつまで私を小さい子呼ばわりしてるのよ!」
私が大声をあげると、さらにダイニングに笑いが響いた。