波乱の文化祭が幕を閉じてから、俺は結華と距離を置くようになってしまった。正確には前みたいに話せなくなってしまった。文化祭の時に結華がついた嘘が要因であることはわかりきっていた。

結華「凛月いる?」

凛月「結華、え?どうした?」

結華「ちょっと話あるんだけど。来てくれるよね?」

目が笑っていない。これは、断れない。俺は本能でそう感じた。

凛月「お、おう…。」

移動後、しばらく沈黙が流れ、やっと結華が口を開いた。

結華「単刀直入に聞くけど、最近私のこと避けてるよね?」

凛月「べ、別に避けてるつもりは…。」

結華「嘘つけ!!私が声かけようとしたら逃げるし、部活中もよそよそしいし…避けてないんだったら何なのよ!」

凛月「うっ!そ、それは…。」

完全に言葉に詰まってしまい、沈黙が流れる。俺は弁明の言葉なんて浮かんでくるわけもなく、謝罪以外に選択肢はないとわかった。

凛月「悪かった。確かに文化祭終わってから避けてた。」

結華「何で?私に言えないこと?」

凛月「文化祭の日、お前俺に嘘ついたじゃん。劇、一人だったって…。会場暗かったけど、観客席意外と見えるんだよ。だから、何で嘘つくんだろうって考えて、俺信用されてないんだって思って、それで…。」

うまく言葉にならない。気持ちがぐちゃぐちゃだ。

結華「凛月、ごめん。それは私がいけなかった。凛月のためを想ってついた嘘が裏目に出ちゃった。誰といたかは言えないけど、でも凛月を信用してないとかじゃないの!それだけは信じてほしい!」

結華も俺を傷つけないように必死に言葉を選んで紡いでる。結華は嘘が下手だ。だから嘘ついてもすぐわかる。ただ、嘘が下手だからこそこの言葉は本心だとわかる。

凛月「結華、避けて本当にごめん。言えない原因は俺だろ?なら俺、結華が嘘つかなくてもいいように変わる。」

結華「凛月…。ありがとう。」

結華の目には涙が溜まっているように見えた。俺はその涙を見て、うじうじしてるだけでは何も変わらないことを再確認できた。文化祭の日、結華は遥翔と一緒にいたんじゃないかと思った。結華が俺に隠し事なんて、それ以外考えられない。だとすれば、俺がやるべきは過去を遥翔の記憶を取り戻すこと。俺は必ず記憶を取り戻すことを固く決意した。