《演目中》

劇が始まり、一瞬で観客の心を掴んだことがわかった。さすがと言わんばかり…。俺も完全に役になりきっていた。それから劇は進み、とうとうクライマックスになった。

凛月(役)「待てよ!ちゃんと話させてくれ…!」

親友役「離せ!俺はお前に合わせる顔がねぇ…。俺にお前の親友を名乗る資格なんてねぇんだよ!!」

凛月(役)「ふざけんな!勝手に決めんなよ!約束しただろ?何があっても、誰に何と言われようと、お前は俺の親友だ!それだけは絶対に揺るがねぇ!」

親友役「くっ…。いいのか…?こんな俺が親友を名乗っても…。お前は俺を許してくれるのか?」

凛月(役)「あたりめぇだろ?今更何寝ぼけたこと言ってやがる。これからもずっと親友だ。」

親友役「おう!ありがとな!」

ここでステージは暗転。劇は終了した。最後ステージでの挨拶で観客が涙しているのが暗くてもわかった。その中で俺は結華を見つけた。

凛月「結華のやつ泣いてやがる、ていうか隣にいるやつ誰だ?クラスメイトか?でも男っぽいな…。」

その後俺は結華にLINEをし、合流することになった。

凛月「あ!結華!」

結華「凛月〜!!劇めっちゃ良かったよ〜!!」

結華は合流早々抱きついてきて大号泣だった。

凛月「いくらなんでも泣きすぎだろ。」

結華「しょうがないじゃん!!良かったんだもん!」

相変わらず情に訴えかけるような物語には弱いようだ。

凛月「ていうか俺結華に聞きたいことがあんだけど。」

結華「ん?なに?」

凛月「隣で見てた男誰?やけに親しげだったけど、友達?」

結華「隣?なんのこと?私一人で見てたよ!」

凛月「え?嘘?そんなわけn…!」

そこで結華に言葉をさえぎられた。

結華「もう!誰と勘違いしてるのよ!私クラス戻るね、じゃあ後でね凛月!」

そして結華は走って行ってしまった。俺のモヤモヤした気持ちは完全に行き場を失ってしまった。

凛月「何で嘘つくんだよ…。」

《結華side》

結華「劇めっちゃ良かった…。最高だよ凛月。」

遥翔「おう、そうだな。凛月、あんなにでかくなってたのか。」

遥翔と感想を言い合っていると、凛月からLINEが入った。内容は聞きたいことあるから合流したいというものだった。

結華「凛月が合流したいって。私もう行くね。遥翔はこの後どうするの?」

遥翔「凛月、元気そうで安心したわ。俺は帰るよ。新幹線の時間あるし。」

結華「そっか。じゃあまたね。」

遥翔「そんな悲しい顔するなよ!根性の別れとかじゃねぇし、笑ってくれよ結華。かわいい顔が台無しだぜ?」

結華「もうっ!相変わらず口がうまいんだから!わかったよ。またね!」

私はこれでもかというほどの笑顔で遥翔に別れを告げた。すると遥翔も笑顔で返してくれた。

遥翔「おう!またな!」

その後凛月と合流し、聞かれたことは予想通りだった。でも私は一人だったと嘘をついた。それが今の私にできる精一杯の手助けだと思ったからだ。凛月が一人で思い出すためには、私が全部助言してたらダメなんだ。私は心を鬼にして、凛月を騙した。