凛月「なぁ遥翔!どこまで行くんだよ。」

遥翔「凛月は相変わらずだな!ほら、手貸せよ。一緒に行こうぜ。」

凛月「おう。」

遥翔の手を取った瞬間、車がこっちに向かって突っ込んできているのが見えた。

凛月「遥翔!危ないっ!!!」

俺は遥翔を突き飛ばした。その瞬間鈍い音がその場に響いた。車に跳ねられたのだ。俺はそこで意識を手放した。

どれくらいの時間がたっただろう。何か声が聞こえる。誰の声だ?

遥翔「ぐすっ。凛月、俺を庇って…。馬鹿なやつだな。絶対死ぬんじゃねぇぞ。勝手に死ぬなんて許さねぇからな。」



凛月「はっ!はぁはぁ…。ここは?」

結華「凛月!!良かった、目が覚めて。」

凛月「結華?俺どうしてここに…。」

結華「倒れたんだよ。部長が運んでくれたの。」

凛月「そうだったのか。心配かけて悪い。もう大丈夫だ。」

結華「ううん、謝らないで。私の方こそごめん。」

結華の謝罪はおそらく「遥翔」の名前を出したことだろう。しかし、名前を聞いただけで記憶が呼び起こされた。不思議なことだ。しかし顔は全く思い出せなかった。やはり出てくるのは凛とした碧い目だけ…。
そんなことを考えてると、俺はあることを思い出す。

凛月「なぁ、そういや今何時?」

結華「え?11時だけど…。」

凛月「やべっ!劇始まっちまう!行かねぇと!」

結華「え!?行くの??まだ寝てた方が…。」

凛月「もう平気!じゃあな!看病サンキュ!」

結華「あ!ちょっと凛月!」

俺は結華の言葉を無視して体育館へ向かった。

凛月「悪い!遅くなった!」

そう言うとクラスメイトは「おせぇよ!」と言いながら笑っていた。まもなく開演時間だ。

《凛月が劇に行ったあとの結華》

凛月は劇があるからと行ってしまった。

結華「ちょっとくらい休んでもいいのに…。ホント昔から無茶ばっかりするんだから!」

?「結華か?」

突然声をかけられて驚いた。しかし振り向くと凛とした碧い目が飛び込んできた。こんなに綺麗で強い目は1人しか知らない。

結華「え?何で遥翔がここにいるの?」

遥翔「よぉ!久しぶりだな!たまたま戻ってきてて…っていうのは建前だ。凛月の母さんから連絡あってな。」

結華「そうだったんだ。凛月なら劇に行っちゃったよ。私これから見に行くの。一緒にどう?」

遥翔「せっかくだから行こうかな。凛月には会えないけど。どうせまだ忘れたまんまなんだろ?」

結華「うん。残念なことにね。さっき一瞬事故の記憶だけ戻ったみたいだけど…。まだ不完全かな。」

遥翔「そっか。じゃあ完全に思い出すまでお預けだな。」

遥翔は笑っていたが、目の奥は泣いているように見えた。

そして私たちは体育館へと足を進めた。