凛月「遥翔、だよな?」

俺が声をかけると、遥翔はこちらを向いて俺を真っ直ぐ見据えた。

遥翔「久しぶりだな、凛月。」

俺は遥翔の瞳にくぎ付けになった。俺の記憶にずっと残り続けた凛とした碧い瞳。

遥翔「凛月?」

凛月「あっ、悪い。お前の目、綺麗だなって思って見入っちまった。」

遥翔「そっか、気にすんなよ。」

しばらく沈黙が流れた。何か話さないとと覚悟を決めて声を上げた。

凛月・遥翔「あのっ!!」

声を上げたのは2人同時。思わず笑いが零れた。

凛月「ふふ、あはは!!」

遥翔「ははっ!そんな偶然あるかよ!」

笑いがおさまると、遥翔が口を開いた。

遥翔「なぁ、俺から話してもいいか?」

凛月「おう。」

遥翔「まず、ごめん。俺が守るって約束したのに逆に俺が守られちまった。凛月が起きたら謝ろうと思ってた。でも、俺との記憶だけ無くしたって知って、会うのが怖くなった。だから逃げるように引っ越した。向こうに行っても、罪悪感は拭えなかったし、このまま会わない方がいいんじゃないかって思う時もあった。それでも俺は、昔みたいに戻りたい!もう逃げないし傷つけさせないって約束する、だから!凛月と一緒にいたい…。」

遥翔の目はとても真剣で嘘を言っているようには見えなかった。本当に苦しい想いをしたんだというのが痛いほど伝わってくる。そんな遥翔の誠意に俺は応えなければならない。

凛月「遥翔。俺はお前を守れて良かったって思ってる。遥翔が責任感じる必要はない。思い出すまでいくつも葛藤を繰り返した。思い出さない方が遥翔にとって幸せなんじゃないかって、思い出す行為は俺の自己満足なんじゃないかって…。それでも、忘れたままでお前に会いたくなかった、絶対に思い出したかった。だって、遥翔を苦しみから救い出せるのは俺だけだから。俺が思い出して、心配いらないって、大丈夫だって伝えないとお前は苦しみ続けるから…。」

遥翔「凛月…。」

凛月「昔みたいに戻りたいのは遥翔だけじゃない。俺も同じだ。だから今度は、約束も誓約書ない、お互いがお互いを助け合う友達になろう!」

俺は笑顔で遥翔に手を差し出した。俺の手を遥翔は力強く取った。

遥翔「おう!」

結華「うん、お互いが気持ち伝えられていい感じじゃない??」

瞬「あぁ、そうだな。」

凛月「結華!」

遥翔「瞬!」

凛月「2人もありがとな!2人がいなかったら、今この状況もなかった。」

瞬「相変わらず大袈裟な奴だ。」

結華「そんなに感謝してるならアイスでも奢ってね!」

凛月「あぁ、それくらいはさせてくれ。じゃあ買いに行くか!」

結華「レッツゴー!!」

遥翔「行かないのか?」

瞬「そんな奢ってもらうほどのことはしてねぇよ。」

遥翔「瞬らしいな。でも本当にありがとな。お前がいなかったら、俺はここにいなかった。岩手に行って、罪悪感に潰されずに済んだのは間違いなく瞬のおかげだ。感謝してもしきれないぜ。」

瞬「どういたしまして。」

遥翔「お、やけに素直だな?ついに俺の想いが届いたか!?」

瞬「そんなんじゃない。大袈裟だって思ってるけど、お前とか凛月には意味ないなってわかった。」

遥翔「なんだよそれぇ~!!」

瞬「ほら、凛月たち追うぞ。」

遥翔「おう!」