─刹那。


「─また、人に泣かされたのか。彩蝶」


空から舞い降りてきたのは、中性的なとても綺麗な男性。

「…泣いてないわ」

「目を赤くしてよく言う」

男性は笑うと、しゃがみこんで、優しく彩蝶様の目元を拭った。

髪が真っ白だ。透き通るような肌。
赤い瞳は彩蝶様に向けて優しく細められ、

「紫苑は大丈夫だと言っただろう?」

と、微笑んでいる。

「でもっ」

「彩蝶、私が嘘をついたことがあったか?」

「……っ」

「何度も言うが、お前が望むなら、この国を滅ぼしても良い。お前が苦しむものは、存在してる意味は無い」

「……っ、物騒よ、刹那(セツナ)」

「人の道理など、私にはわからん」

─……異様な雰囲気。千景様を見上げると、千景様は朱音に向かって、小さく首を横に振る。