「柊には年の離れた兄弟がいたが、現在は兄の方が行方不明だな。彩蝶曰く、大丈夫らしいが……ともかく、冬はそれで離散した。何人かは普通に警察に連れていかれていたな」

「犯罪の隠れ蓑になっていたのですね…?」

「そうなるな。柊の兄の方がちょくちょく顔を出しては、犯罪者を暴いていた時期があったらしく、彩蝶が喜んでた覚えがある」

「じゃあ、本当に柊の兄君の方はご無事なのですね」

「何も分からないから、何も言えないがな」

ならば、これ以上、話を広げても仕方があるまい。話を切り替えるため、契約結婚とはいえ、これから嫁ぐことになる彼の実家、橘家について尋ねてみた。すると、彼は優しい顔で。

「橘家は基本、家族仲は良好だ。当主夫妻である俺の両親が仲良いからな。だから、嫁姑問題も心配するな。めちゃくちゃにお前を可愛がる気満々で、楽しみにしてたぞ」

「えっ、契約結婚ってことは……」

「あー、言ってない」

─まぁ、そんな簡単に言えることでもないから、仕方がないだろう。良かった。御両親に紹介される前に聞いておいて。

「…それは少し、良心が痛みますね」

「すまない」

「いえ、務めと思って頑張ります」

可愛がられても、返せるものがない。
孫の顔を見せてあげられるわけではないのだから、距離感には気をつけなければならない。

「……亡き緋ノ宮夫妻と、仲が良かったんだと」

「え?」

「お前の両親、お前の心情と反対に、橘とも朱雀宮とも仲良しだったと」

「えぇ……」

それは知らなかった。
橘家とも親交があったのか。
確かに、父さんも母さんもフレンドリーな人で、どこにいっても、すぐに友達を作っていたけど。
……国籍や性差、年齢を問わず。