「金曜日の授業で言ってたよ」

「やばい!勉強してない!」

「今からすれば間に合うと思うよ」

笑いながら言うと「集中する!」と言ってテキストを開いていた。

その姿を微笑ましく見つつ、何気なくまた皇坂くんのほうを見る。
今日も難しそうな本を読んでいた。

女子生徒の何人かがチラチラと皇坂くんのほうを見ているが
気にすることなく自分の世界に入っていた。

「冷徹王子、か・・・」

ボソッと呟く。

「ん?何か言った?」

咲羅がテキストから顔を上げ私を見る。

「ううん、何も言ってないよ」

「そう?
あとちょっとで暗記終わる」

「え、早くない?」

「勉強での記憶力はいいほうだから」

「その記憶力をもっと別のところでも発揮したらいいのに」

「にひひ」と笑う咲羅の笑顔を見つつ、私もテキストに視線を移した。

あ、そうだ。今日は晴れてるから燈真(とうま)練習行くかな。
買い物終わりに迎えに行こうかな。そんなことを考えながら勉強を再開した。