「ナイス!」

グッとサインをだすと男の子は嬉しそうに笑い、

「ありがとうございます!」

と言い、コートに戻って行った。
他の男の子たちも頭を下げていた。

「さっき何か言いかけた?」

ベンチに座りながら私の顔を見る。

「え、あ、ううん。何も」

「そう?」

不思議そうに見つめられるが何も言えない。
いや、言ったらダメ。
この気持ちは言えないよ。

「バスケやってたの?」

変わりに口から出たのは違う話題。

「中学の時に」

それだけ言うと顔を逸らされてしまった。
あ、これは触れてはいけない話題だったかな。

「そうなんだ、燈真に教えてるとき上手だなぁって思ってたからやっぱり経験者だったんだね」

「経験者じゃないと教えられないと思うけど・・・」

「あ、本当だ。確かに」

「・・・」

「その沈黙なんか嫌だ」

「・・・」

「・・・ねぇ!」

皇坂くんの肩が震えていた。
絶対笑ってる。