ドキッと胸の鼓動が早くなるのが自分でもわかる。
きた・・・。

咲羅と一緒に教室の入り口に視線を移す。

ガラッ

ドアを開け、入ってきた男子生徒。
いつもと変わらない冷たい表情。
クラスメイトが挨拶をしても返事をせずに自分の席に座り、
両耳にイヤフォンを挿し、難しい本を読み始める。

いつもと変わらない風景。

少しでもこっちを見てくれないかな、と思ったけど
やっぱりそんなことはなくて。
しばらく見つめていたけど、こっちを見てくれる気配はなかった。

「いつも通りだね、冷徹王子は」

咲羅の言葉に「そうだね」と返し、
携帯で今日の運勢をチェックした。

「あ、1位だ」

「ほんとじゃん、なにかいいことあるかもよ?」

携帯を覗き込んだ咲羅が「私はー?」と聞いてくる。

「咲羅は5位だね」

「中途半端・・・。
まぁでも自分が楽しいと思えば運勢なんて気にしない」

「確かにそうだね」

「ははっ」と笑うと、担任の先生が教室に入ってきた。

席を立っていたクラスメイトが座りだす。
何気なくもう一度、皇坂くんの席をチラッと見ると

「っ!」

こっちを見ており、バチッと視線が重なった。
すぐに視線は逸らされてしまったけど、
一瞬でも目が合ったことが嬉しかった。

「今日の運勢、やっぱり1位だっ」

私の声は誰にも聞こえることはなく、朝のホームルームによってかき消された。