「あ、ありがとう・・・」

あまりにも綺麗に優しく笑うからその一言しか伝えることが出来なかった。
今まで感じなかったこの気持ち。
胸がきゅうっと苦しくなるこの感じ。

「俺、この次の駅で降りるんだけど、逢原さんは?」

「えっと、私はその次の駅かな」

「そうか」

それだけ言うと皇坂くんは立ち上がった。
ふと窓の外を見るともうそろそろ次の駅に着きそうだった。

『次はー、〇〇駅、〇〇駅になります』

「あ、そうだ」

歩きかけた足を踏みとどめ、私のほうを振り返る。

「昨日のこと何で誰にも言わなかった?」

「えっ?あ、えっと、
別に言いふらすことでもないかなって、思って・・・。
それに私が話したくなかったというか、なんというか」

そこまで言ってから「あっ」と気付く。

「いや、変な意味は全くなくて!
あのっ、ほら、プライベートのことを他人に話されるのは嫌かなと思って、うん」

自分でも何を言っているのか分からなかったが伝わったのだろう。
皇坂くんは笑っていた。

「そうか、それじゃあ、昨日のことも含めて今日のこともこれからのこと全部、
俺と逢原さん2人だけの秘密、だな」

その言葉とともに優しくふわっと笑った。

『扉が開きます、ご注意ください』

プシューッ

「また明日、学校で。気を付けてな」

電車のドアが開くと皇坂くんは降りて行ってしまった。