「あ、待って」

話せたことが嬉しくて呼び止めてしまった。
皇坂くんが振り返る。

「皇坂くんって地元こっち方面なの?」

絶対この質問今じゃなかった。
勝手に言葉がでてきたけど、絶対違った。
全然話したことない人に答える質問じゃない。

重なっていた視線が逸らされた。
無視される、そう思った。

「ご、ごめんっ、変なこと聞い「そうだけど」えっ?」

咄嗟に出た私の声に被せるように答えた皇坂くん。

「最寄り駅は今の駅から5つ先」

そう言うとさっきまで座っていた私の隣にまた座り直した。
突然のことにパニックになりながらも

「あ、そ、そうなんだっ」

頑張って言葉を紡ぐ。
答えてくれるとは思っていなかったから
今の私はきっとかなり驚いた表情をしていると思う。

「逢原さんも?」

「え?あ、私?
そうだね、私もこっち方面・・。ってあれ、名前・・・」

質問されたのも驚いたけど、名前で呼ばれたことにも驚き、
今の私はかなりアホな顔をしているかもしれない。