取り残される私とお兄さん。
これはもう私が切り出さないと何も起こらないだろうな。
そう思い、勇気をだして話しかける。

「あ、、えっと、」

でも何を話せばいいか分からない。
言葉に詰まっていると、お兄さんが私に背を向け歩き出してしまった。

「あ、ちょっと待ってください!」

咄嗟にでた言葉だった。
お兄さんの足が止まる。

「えっと、今日のことは誰にも言わないです。
だから、今まで通り、弟に燈真にバスケを教えていただけないでしょうか。
燈真、お兄さんと練習するの楽しいみたいでいつも話してくれるんです。
だからお願いします」

「・・・」

お兄さんからの返事はない。
顔が見えないから表情が分からない。

やっぱり、ダメなのかな・・・。
そんな風に思ったとき、

「別に、」

「え?」

「もう教えないとは言ってない。
それに言いたければ言ってもいい。隠してるわけでもないし」

お兄さんは私の目を真っ直ぐに見つめ、逸らすことなく、そう言った。