「なーんだ!あの幽霊はただトモダチが欲しかっただけみたいだよ!消えちゃって。かわいそうに。クスクス…」


 どこからか現れたアリアさん。
 意地悪に笑う。

 そんな……!
 ただ友達がほしかっただけ。と言われても。


 わたしは、幽霊と友達になんてなりたくないよ!
 あの幽霊が消えてくれて、ホッとして泣きそうなくらいなのに。


 そんなことより!
 わたしは抱きかかえたましゅちゃんのことが気がかりだった。

「ねぇ、アリアさん! わたしに憑いてたのは、あの黒い幽霊だったんだよね?」
「そうだよ?」

 だったら。
 ましゅちゃんは、いったい……?


「ましゅちゃんは……どうしてわたしの前に現れたの?」
「まだわからないの?」

 ふんっと眉をひそめるアリアさん。
 なんだか怒っているように見える。



「あの幽霊が憑いてきちゃった日から、あなたが連れていかれなかったのは、その子が必死に守ってくれたからだよ!」


 つまり、ましゅちゃんがいなかったら。
 わたしはあの幽霊に連れていかれてたってこと!?
 


 ウソ!そんなことが……。だって、だって。
 なにも知らずにましゅちゃんをゴミ箱に捨てたなんて――!
 

「そんなにボロボロになるくらい、身を挺して守るなんて……アリアには信じられない」

 そう言って呆れた顔をする。


 ま、まさか!
 こんなに身体がボロボロになったのは、わたしを守ってくれていたからなの!?

「ましゅちゃん、ごめん!守ってくれてたなんて知らなくて。捨てたりしてごめん!」



『人形って魂がやどるっていうよね!』

 葉月ちゃんが言っていたことを思い出した。


 ましゅちゃんには魂が宿ってたんだ。

 そして、わたしを必死に守ってくれた。

 それなのに。それなのにわたしは……。
 なんてひどいことをしてしまったんだろう。


 ましゅちゃんをゴミ箱に捨ててしまった後悔と。
 呪いの人形だなんていった罪悪感。

 いろんな感情で、ぽろぽろと涙が流れた。