「あ、あ……きゃーー‼」
 
 ぎょろりとした目玉が、すぐ目の前に…!
 慌てて這いつくばりながら、ピアノの下から飛び出した。

 すぐ音楽室から逃げないと…!
 しかしさっきまで近くにいた幽霊は、今度は出入り口のドアの前にいる。
 それはまるで出口をふさいでいるかのように。

『キャハハ。かくれ、んぼ。タノシカタ』

 にこりと笑った。

 でも。
 次の瞬間、がらりと表情を変える。

『……もうオシマイ』


 ボソリとした声にぶわりと全身に鳥肌が立つ。
 
 きっともうだめだ…!
 逃げられない。そう悟った。

『トモ、ダチ、ナカ…ヨク』

 ケタケタと笑いながら、幽霊は手を伸ばす。

 30センチ……!
 10センチ……!

 もう……すぐ目の前。
 逃げる道も気力もない。
 もうだめだ。ぎゅっと目をつむる。




 ――ぐしゃり。

 潰れた音が響きわたる。