そう思ったのだけれど。
アリアさんは呆れたようにため息を吐いた。
「はあー。何言ってるの?全然間違ってるよ」
ぷんと頬をふくらませて、子供のように拗ねる。
いったいどういうこと?
ましゅちゃんはわたしになにかするために、アリアさんと手を組んだんじゃないの?
「もう……!アリアが教えてあげるよ!憑いてるのはその子じゃないよ?」
アリアさんがわたしの右の肩を指先している。
ゆっくり視線をたどると……。
「いやあ――‼︎」
わたしのすぐ後ろに黒いモヤがかかった人とは呼べないナニカが立っていた。
人とは呼べないナニカ。
そう思ったのには理由がある。
その子がこの世の人ではないと、すぐに分かったから。
全身が黒のもやで覆われていて、顔は見えない。
アリアさんは、不気味さを感じるものの。
見た目は女の子そのもの。
だから、人の形を保てていないこの幽霊が、余計に不気味で怖かった。
恐ろしくて腰を抜かしそうになっていると。
『ネエ、アソボーヨ』
頭に響くような不気味な声。
幽霊はわたしに向かって手を伸ばす。
「いやっ‼」
反射的に後ずさりした。
そのおかげで、なんとか触れられずにすんだけど。
もしも、あのまま触られていたと思うと…。
わたしはぞくっとふるえた。
「あなたはいったい誰なの? な、なんでわたしに憑いてるの?」
わたしはハッとした。
身体が重かったり、肩が痛かったのって。
ましゅちゃんの呪いだと思い込んでいたけれど……。
「も、もしかして……この幽霊のせいなの?」
わたしの質問に、薄気味悪くにたーと笑った。
不気味で、怖くて泣きそうになる。
なんで?どうしてわたしなの?
「なんで……わたしなの?」
声が震えた。だってこんな幽霊知らないもん。
憑かれる理由が分からないよ。
「この幽霊はあなたに執着してるみたいだね。クスクス」
アリアさんは、怯えるわたしの様子を見て楽しそうに笑う。
「ねぇ、アリアさん!あの幽霊が消える方法あるなら教えてもらえないかな⁉︎」
頭上にふわりと浮かぶアリアさんに質問する。
この学校の生徒を怖い目に遭わせるアリアさんに、助けを求めるなんて。
自分でもどうかしてると思う。
だけど目の前の人の形を保ててない幽霊より。
女の子の姿に見えるアリアさんの方が、味方に見えちゃうんだもん!