「なんで……やだ。怖いよ」

 声がふるえた。
 そんなわたしにさらに恐怖がやってくる――。

「クスクス……」

 わたしは息をするのをわすれた。
 すぐ背中で笑い声がしたから。

「だ、誰!?」

 わたしはすぐに振り返る。
 だけど、誰もいない。

 な、なにこれ、もう本当にいやだ。
 
「今すぐ帰りたいよ……」

 弱音が自然ともれたとき。
 また……。

「それはだめだよ!クスクス……」

 今度ははっきりと聞こえた。
 女の子のような不気味な声。